仙台高等裁判所 昭和47年(ネ)3号 判決
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〔判決理由〕二 そこで控訴人の保有者責任の有無について考察するに、本件加害車両が控訴人の所有名義であることは当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すると、次の事実を認めることができ、右認定に反する証拠はない。
1 控訴人が代表取締役をしていた訴外日本電信工業株式会社は、伊勢崎市の控訴人肩書住所地に本店が置かれ、その役員は控訴人の兄山口喜美雄ら親族によつて占められている同族会社であり、その資本金は僅か金五〇万円であるとはいえ、法人格を有する株式会社である。
2 訴外会社は同会社名で営業するほか、日本電気通信協会という法人格をもたない協会の名称を用いて営業しており、前橋市には右協会関東支部の事務所と同一場所に営業所を置いていたが、仙台市には営業所はなく、右協会東北支部の事務所においてもつぱら右協会の名称を用いて会社業務を行なつていた。
3 本件加害車両の運転者である前記渡辺は右協会東北支部に勤務していたものであるが、実際上は右協会の名称を用いて営業していた訴外会社の従業員として、その業務に従事していたもので、控訴人個人に雇われていたものではなかつた。
4 本件加害車両は、他の数台の自動車とともに、控訴人個人名義で買入れられ、保険契約がなされ、その所有名義に登録されているが、これは訴外会社が資金繰りのため手形不渡りを出した関係で、同会社名義で購入することができなかつたため、控訴人個人名義を形式上利用したにすぎず、その月賦代金、保険料等の支払いは、同会社の当座勘定により行なわれていた。
自己名義の使用を許容したいわゆる名義貸与者に保有者責任があるというためには、その者が加害車両の運行について事実上の支配力を有し、かつ、その運行による利益を享受する関係になければならないと解されるところ、右認定事実によると、本件加害車両が控訴人の所有名義に登録されていたとはいえ、控訴人は、訴外会社の代表取締役としてはともかく、個人としては何ら支配力を有していなかつたものというべきであるから、本件事故につき控訴人個人に保有者責任を負わせることはできないといわなければならない。
三 次に控訴人の前記渡辺の使用者としての責任についてみるに、右渡辺は訴外会社の従業員としてその業務に従事していたもので、控訴人個人に雇われていたものでないことは前認定のとおりであり、また、前記協会は、訴外会社が業務を行なうについて名称として用いたもので、訴外会社とは別個に控訴人個人が運営していたとは認めがたいから、右渡辺に対する使用者としての責任が控訴人にあるということはできない。
四 そこで進んで控訴人の代理監督者としての責任の有無について検討するに、控訴人が訴外会社の代表取締役であつたことは前認定のとおりであるが、控訴人が訴外会社の代表者として現実に使用者である訴外会社に代つて被用者である前記渡辺の選任、監督を担当していたことについては、本件全証拠によつてもこれを認めるに足りず、かえつて当審における控訴人本人尋問の結果によると、訴外会社は前橋、千葉に営業所があるほか、名古屋、仙台でも営業しており、その従業員は八〇名、自動車の保有台数は八台であり、前記協会東北支部の事務所において右協会の名称を用いて行なつていた営業については、同支部長坂本要が現実にこれを監督する地位にあり、控訴人は月に一回程度来仙するだけで常時監督する関係になかつたことが認められるから、右渡辺の行為につき控訴人個人に対し代理監督者としての責任を問うこともまた相当でないといわなければならない。
五 以上の次第で、右渡辺が惹起した本件事故について、控訴人には何ら帰責事由は存しないものというべきであるから、被控訴人主張の爾余の点につき判断するまでもなく、被控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきである。よつて、これと趣旨を異にする原判決は失当で、本件控訴は理由があるから、原判決中控訴人敗訴部分を取消して被控訴人の請求を棄却することとし、民訴法三八六条、九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(佐藤幸太郎 田坂友男 佐々木泉)